赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「遅れたらいけないと思ったのも嘘じゃないけど、本当は楽しみすぎて早く起きちゃった。2人で遊びに行くの初めてだし。それより、いきなり腕引っ張っちゃったけど、痛くなかった?」
「うん、大丈夫」
「良かった。ビックリさせてごめんね」
「笑わないでよ!」と言い返す隙もなく、潤くんは滑舌よくスラスラと言葉を並べた。
余裕たっぷりで落ち着いていて。さりげなく嬉しい言葉を口にした上に、私の心配もしてくれて。
さっきもまた、無意識に顔を覗き込んできた。
同い年なのに、私よりもうんと大人に見える。
……ズルいなぁ。
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電車に乗り、レストランがある町へ向かった。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは。2名で予約していた夜城です」
「夜城様ですね。こちらへどうぞ」
案内役の店員さんに会釈し、奥に進む。