赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
「失礼します……」
ぎこちない足取りで恐る恐る中へ。
こっそり鍵をかけられないかを確認し、中央のテーブルがある席に座った。
「それでは早速本題に入りますね。呼び出した理由は、健康診断の話をしたかったからです。雨村さんは……血液検査で3年連続Fランクなんですよね?」
「は、はいっ。そうですけど……」
向かい合わせになった先輩の口から、Fランクという言葉が出てきて、心臓と体がビクッと揺れる。
待って待って、なんで私の血液事情を知ってるの……⁉
Fランクだってことは、先生や千冬みたいな限られた人しか知らないはず。
なのにどうして? この先輩はほんの数分前に会ったばかりなのに。誰かが教えたの?
ううっ、怖いよ。
潤くん、千冬、柚季ちゃん、助けて……。
「あ、あの、なんで知ってるんですか……?」
「また驚かせてすみません。実は僕、医者の息子なんです。4月に健康診断がありましたが、あれはうちの病院の従業員が行ったんですよ。そこで君のことを知ったって感じかな」