赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
いっそのこと担ごうかと悩んでいると、再び彼が声を漏らした。
何を欲しているのか、耳元に顔を近づける。
「──……血が、欲しい……」
耳に届いた言葉を理解した瞬間、心臓がドクンと音を立てた。
長いまつ毛と大きな目。
吸い込まれそうな黒い瞳の中に、時折深い赤が怪しく光っている。
──吸血鬼だ。
「えっ、えっと……血、ですか?」
「はい……少し、で、いいので……」
ど、ど、どうしよう。
まさかこんな緊急事態に鉢合わせてしまうなんて。
瞳が赤く点滅しているのは、血液が足りない状態。
つまり、危険な状態ということ。
基本吸血鬼は、朝晩の2回吸血をすると言われているけれど……ここまで酷い血液不足になっているのは見たことがない。
「お願い……します……」
揺らぐ瞳の点滅が激しさを増していく。
どうしよう、このままじゃ餓死してしまう。
でも、Fマイナスの私の血じゃ……。
「…………ど、どうぞ……」