赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―
吐露の上り月
「失礼します……」
「あ、こんにちは」
息を整えて保健室のドアを開けると、昼休みと同じ場所に沢村先輩が座っていた。
「用事は済みましたか?」
「はい……お待たせしました」
「失礼します」と小さく呟き、先輩と向かい合わせになるように腰を下ろす。
昼休みは廊下を歩く人の足音や話し声が聞こえていたけれど、放課後は話し声はおろか、歩いている人もいない。
部活動生と顧問の先生以外、みんな下校し始める時間帯だもんね。
静かだから余計緊張する。
「では早速、昼休みの続きを話しますね。まず最初に、雨村さんに合う治療法を見つけるため、軽いカウンセリングを行います」
「は、はいっ」
「その後、どのように治療していくか、期間はどれぐらいにするかなどを綿密に決めて、雨村さんの負担にならない範囲内で始めていく予定です」
説明を聞く限り、病院と同じ要領で本格的にやってくれるらしい。