記憶の奥の怪異
(わぁ....綺麗な部屋.......)

壁は古い和風のお城みたいな感じ。

床には真っ赤な彼岸花が一面に咲いている。

ちょっと床は見えてるけど。

驚いていると、三味線を弾いてた男性が肩をとんとん、と叩いてきた。

「?」

振り返ると、小声で耳打ちをされた。

「いいか、ここから息を殺して何も喋るな。バレたら俺よりもお前が危ない」

その男性の顔は、自分よりも私のことを心配してくれてる感じだった。

私は黙ってコクコクと頷く。

男性は小声で、よしっ、と言って私を抱えて彼岸花の道を歩き始めた。

一本道?の先にはひとつの机と椅子。

机の上には、一本の蝋が黒い蝋燭が置いてあった。

男性は私を机の下の小スペースに入れ、と促すように背中を押す。

(だ、大丈夫だよね....)

意を決して私は入った。

男性は三味線を構えて、教卓に座った時と同じように目を閉じた。

笛の音が聞こえてくる。

♩♬♪♪♩♬♪♪~♩♩♩♬♪♪~♩♩

笛の音が聞こえてくると、男性が三味線を弾き始める。


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