星空とミルクティー
雪が残る春

 ようやく雪が融け始めて気温も上がったと思ったら、またすぐに冬に逆戻りする。

そういう四季の順番もわからないような、頭のおかしい地域にもう23年もいる。


 単位ぎりぎりで専門学校を卒業して、先生の推薦文のおかげで入れたような中小企業の事務員になって3年目。

クソボロアパートと勝手に命名したワンルームも、すっかり自分の城と化して3年目。

 南のほうでは桜が満開ですなんて、いったいどこの国の話だ。
こっちはまだ雪が山盛りです。桜の枝には雪が咲いてます。


おうおう、花見ですか。いいですなぁ。外でビール、最高ですなぁ。


休日のテレビと会話をしていたら、部屋の外、アパートの廊下がなにやら騒がしいことに気づいた。

そういや今は引っ越しのシーズンか。
左隣には先月まで、サラリーマン風のおじさんが一人で住んでいて、今は空室だった。


 ちなみに右隣は母国語は何語なのかよくわからない、春夏秋冬、肌が小麦色なエキゾチック美女が住んでいる。

あたしの部屋の2階へつながる鉄の階段は錆びだらけだし、たまに上から3段目のちょうど西日が当たるところなんかには野良猫が暖を取るために団子になっている。

全部で6部屋あるけど、1階部分には誰が住んでいるのかは知らない。


 家賃は激安の3万円。

外観はめちゃくちゃボロいし、ここに住む人はどこかワケアリなんじゃないかと思われるくらい雰囲気最悪だけど、内装は私が入居する直前にリフォームしたようで意外と綺麗だった。
壁は薄いけど。

これがあたしの城ことクソボロアパートのすべて。
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