星空とミルクティー

 アパート廊下の騒がしさにどんな人が引っ越してきたのかと、部屋着のままコンビニへ行くふりをして、ドアを開けた。

ひんやりとした空気が、1時間かけてせっかく暖まったあたしの城に流れ込む。

小さく身震いしながら鍵をかけて隣を見ると、小太りのおばさんと対照的にひょろひょろとしたスーツ姿の男の人が立っていた。

さらにその後ろにはあたしの上半身くらいはあるんじゃないかと思うくらい大きなスポーツバッグを持った学生服の男の子。

父親よりも背が高く、さらさらの髪とおでこが見える。


 このワンルームに一家で越してきたのか? それとも隣だけ部屋数が多いのか?



「あら、お隣さん?」



 あたしに気づいたおばさんがパァっと笑顔を見せる。
なんかうさんくせえな。第一印象はそんな感想だった。



「あ、はい」

「今日からお世話になります、平野ですー」



 うさんくさい小太りのおばさんは語尾を伸ばしながら深々と頭を下げて、持っていた箱を手渡してきた。

ひょろひょろのおじさんも「どうも」と頭を下げる。

最年少の学ランはどこを見ているのか、ぺこりともせずに黙ってうつむいている。



「荷物運んだらご挨拶にお伺いしようと思ったんですけど、あら、おでかけなさるのよね、今渡しちゃって大丈夫かしら」

「あ、すみません、わざわざありがとうございます。隣の結城です」


四角い箱を持ちながら、さっきかけたばかりの鍵を開ける。中身何かな。食べ物だったらいいな。



「それではまたー」

「あ、はい」


3人が部屋に入っていくのを見てから、自分の部屋に戻る。

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