星空とミルクティー
一夜明けて冷静になると、やっぱりちゃんと話をすればよかったのかもしれないと思ったりする。
あの場面を見てから気持ちが先走って、「あたし以外にいるなら」って諦めてしまった。
……一番になれないなら、いらない。そう思うようになったのは、いつからだったか。
「……汐?」
「ん」
「どうしたの? 急に静かになったからびっくりした」
「……昼、何食おうか考えてた」
「汐のお父さんの店でだよね。お父さんってどういう人?」
「どうって、べつに普通。普通の50半ばのおっさん。ーーあ、でも雰囲気は真雪に似てるかも」
「俺?」
「うん。顔じゃないんだけど、なんだろう。とにかく雰囲気。落ち着くっていうか、でもあまり一緒にいすぎると窮屈になるっていうか」
「俺と一緒にいると窮屈ですか」
「あ、いや、ごめん、違う。お前が悪いわけじゃなくて、居心地良すぎてずっと一緒にいたいって思うんだけど、ずっと一緒にいすぎると人としてダメになりそうで怖い、みたいな」
「あぁ。それなら俺も汐といるとき思ってるよ」
「思ってんのかよ」
居心地が良すぎるのは、悪いことじゃない。
それに甘えている自分が嫌になるだけ。
ずっとここにいたいと思いながら、離れなきゃいけないとも思ってしまう。
実家にいるときは違う考えを持ったあたしが2人いて、甘えたくなったり自立したがったりした。
今もそう。
真雪を手元に置いておきたくて「あたしが雇ってやろうか」なんて言う一方で、父のカフェを紹介して自立の手助けをしている。