星空とミルクティー
もらった箱の重さからして焼き菓子か?
そんな期待を込めながらベッドを背もたれにして座り、包装紙を強引にはがす。
「……なんだよ、ラップかよ」
出てきた大小2本のラップを見てあからさまに肩を落とす。
おっと、聞こえるかもしれない。ここの壁は思ったより薄いんだ。隣のエキゾチック美女が話す電話の母国語が筒抜けになるくらいだしな。ラップには罪がない。いずれ使うし。
ラップをドラムスティックのように両手で持って振り回しながら、キッチンのキャビネットの中に放り込む。
そのまま、また靴を履いて部屋を出た。
「あら」
アパートの廊下にはさっきの3人組が立っていた。
なんだろうな、「あら」が気になるんだよな。上品なマダムみたいで。マダムがこんなところ住むのか? ……似合わねえな。
「……さっきはありがとうございます」
「いいえー、ごめんなさいね、つまらないもので」
「や、生活必需品なので助かります」
短い社交辞令を交わして、狭い廊下でぼそぼそと話す3人の後ろをすり抜けようとする。と、呼び止められた。
「結城さん?」
「はい」
「あの、この子、今日からここで一人暮らしだから、これからよろしくお願いしますね?」
念を押すように、言うマダム。
「え? ご家族で住むんじゃないんですか?」
「え? さすがにワンルームに大人3人は、ねえ」
あたしの言葉に目を丸くして、なんの冗談とでもいうように笑った。