星空とミルクティー
アパート横に車が到着する。
駐車場なんてないから、そのまま路上に停めて真雪と父が降りた。
「汐、はい。これ返すね」
預けていた部屋の鍵を手渡されて困惑する。
「え、真雪は……?」
自分の部屋に戻るの?
こんなに早く?
「荷物、運んでくるよ」
あたしの考えていることを1ミリも汲み取っていないのか、いつもと同じ調子で話しながら後部座席からファンヒーターを引っ張り出す。
「……手伝おうか?」
「大丈夫ー」
言いながらアパートの階段を上っていく。そのすぐ後ろを灯油の入った赤いポリタンクを2つ抱えた父が追いかけるように上がって行った。
ーーなにしてんの、本当に。
その背中を睨む。
ドアが閉まる音を聞いて慌てて後を追ったけど、あたしが階段を上り切った頃には2人の姿はなかった。