星空とミルクティー

 髪を乾かしてもらっている間、リモコンを手に取って番組を次々に変えていく。
どうせドライヤーの音で何も聞こえないし、観てもわからない。


大きな手がわしゃわしゃとあたしの髪をかき混ぜる。

あたしが疲れているときや機嫌が悪いとき、真雪はこうして何度か髪を乾かしてくれるようになった。

今も何も言わないけど、きっと気づいている。

あと何回こうやって甘やかしてくれるかな。
そう思うと、もったいなくて拒否できない。


 ドライヤーから出る温風から冷風になって、手がゆっくりと髪を撫でる。

手ぐしで整える指が背中の真ん中まで触れて、ときどきくすぐったさで身じろぎをしてしまう。



「終わったよ」

「あ、ありがと……。ご飯持ってくる」



 急に恥ずかしくなって、逃げるように離れて台所に立つ。
茶碗を取り出していると「汐」と声がかかった。



「俺、2月になったらここ出てく」



 ガチャ、と重ねた茶碗が嫌な音を立てる。



「……そっか。わかった」


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