星空とミルクティー


 真雪が働くようになってから、あたしは実家のカフェに行っていない。

父に対して真雪を取られたような気持ちになっていて顔を合わせたら嫌なことを言ってしまいそうだったし、父と話す真雪のことも見たくなかった。

 まるでヤキモチだ。


 真雪の仕事の話は本人から家で聞いていた。

こういう仕事を覚えたとか、こういう人に会ったとか、初めのうちは真雪が話すことを笑って聞けた。
だけどだんだんうっとおしくなってきて、そのうちそれもできなくなった。

 どんな客と会ってどういう話をしたかなんて、あたしには関係ないし興味もない。
それに、あたしの知らないところで真雪が楽しそうにしているのがたまらなく嫌だった。

そうやってズルズルと時間を過ごしていたら、あっという間に2月が来てしまった。



「汐、こっち来て」



 話せばあたしの機嫌が悪くなるから、真雪は仕事のことを話さなくなった。

代わりにここ最近はほとんど毎日、あたしの髪をドライヤーで乾かす。まるで子どもの機嫌を取るように。

 あたしが大人げないのはわかってるんだ。
言いたそうにしてるから、ちゃんと聞いてあげなきゃって思うんだけど、どうしても笑顔で聞けない。



「はい、終わり」

「……ありがと」

「いいえー。じゃあ俺、風呂入ってくるね」

「うん」



 着替えを持った真雪が浴室に消えていくのを見てから、白いローテーブルを蹴ってテレビのほうへ寄せた。
それから真雪の布団を引っ張ってベッドの横に並べる。

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