星空とミルクティー
こうして一緒の部屋で寝るのも、今日で最後だ。
明日になったら真雪は出ていって、あたしはまた一人暮らしに戻る。
テレビをつけっぱなしにしたまま、真雪の布団の上に寝転がる。
ここ最近は、真雪にとってこの部屋は地獄だったんじゃないか。
お客さんに気を遣うような接客の仕事を終えたと思ったら、家に帰ればあたしの機嫌は悪いし、居心地は良くなかったかもしれない。
そう思うのに、どうして本人を前にするとうまく笑えないんだろう……。
真雪は優しいから、あたしが不機嫌そうにしていても「どうしたの」なんて聞かない。
ただ、あたしの機嫌を読み取っていつも通りニコニコしてるだけ。
これが最後で本当にいいの?
部屋が隣でも、いつでも会えるとは限らない。
実際、真雪が倒れる直前、何ヶ月も会わない時期があった。
浴室のドアが開いて、首にバスタオルをかけた真雪が戻ってきた。
「ーー真雪、髪乾かしてやる」
いつも真雪がしているようにベッドの縁に座ってドライヤーを掲げる。
せめて最後くらい、優しくしようと思った。
「いいの?」
「うん。座れ」
真雪があたしの前に胡座をかいて座る。ミルクティー色の細い髪が濡れて束になっていた。
白いつむじ、骨の目立つ首筋。初めてうちに来たときを思い出す。
あのときの真雪は今よりずっと他人行儀でおどおどしていて、ほとんど無理やり髪を乾かした気がする。
柔らかい髪に手を入れてぐしゃぐしゃにする。くすぐったいのか真雪の肩が震えている。
ーーあぁ、この三ヶ月間、楽しかったな。
人生で初めて、毎日家に帰るのが待ち遠しく思えた。
好きだよ、真雪。ありがとうね。