星空とミルクティー
「俺が部屋に戻っても、またここでご飯食べたり泊まったりしていい?」
「……ダメ。それじゃ部屋出た意味ねえだろ。それにあたしに彼氏ができたらどうするんだ」
「汐、彼氏いるの」
体を起こしたのか、ゴソゴソとした衣擦れの音と意外そうな声が返ってきた。
「いねえよ。もしもの話だよ。あたしじゃなくても、真雪にだって彼女できるかもしれねえじゃん」
「俺? 俺、彼女いらない」
「……お前の年でそんなこと言うの珍しいな」
「そうでもないんじゃない」
ボフッと真雪が枕に顔を突っ込む。
あまり触れられたくない話なのか、声のトーンが下がった。
そういえば、真雪とこういう恋愛の話をするのはあまりなかった。
好きだと自覚してから、真雪のことを知ったつもりで全然知らないことに気がついた。
今さら根掘り葉掘り聞くのも違う気がする。
「汐」
言葉が途切れると、探るようにあたしの名前を呼ぶ。
「だから、なんだよ」
「なんでもないんだけど、ちょっと話がしたいだけ」
「……あたし仕事だって言ったじゃん」
「うん、でももうちょっと。あ、俺がいる間にかかった費用、計算してくれた?」
「あー? そんなのタダでいいよ」
「ダメでしょ」
「いや、ほんとに。家のほとんどの家事やってくれてたから、お前の働きに免じてタダでいい」
「せめて家賃とかさ」
「いらねえ」
「本当にいいの?」
「うん」
本当に楽しかったから。人命救助のつもりで保護したのに、いつの間にかあたしのほうが面倒見てもらってたから。
それでも釈然としないのか、真雪が低く唸る。