星空とミルクティー
スプーンを持った手を止めて考え込んでいると、父が吹き出した。
「晩ご飯食べさせてから帰そうか?」
「……ダディ、真雪の心配ばっかするね」
「まゆ君は今どき珍しく素直で可愛いからねぇ。汐もそう思うでしょ」
同意を求められて口ごもる。
ここで可愛いなんて言ったら、何を突っ込まれるか。
「昔汐が連れて歩いてたわけのわからない彼氏もどきより、まゆ君のほうがよっぽど信頼できるしね」
「あぁそう。その割には初めてここに連れてきたとき焦ってなかった?」
「そりゃ一緒に住んでるって言われたら驚くでしょ」
「そういうもんか」
「そういうもんですよ、親は。……まゆ君がいなくなって寂しい?」
父が真雪と同じことを聞く。
さっきからどうして返答に困ることばかり言ってくるんだ……。
からかっているようにしか見えない。
父にはあたしの気持ちがバレてるのか。
だとしたら恥ずかしさで死ねる。
皿に残っていたビーフシチューをかき集めて口に押し込んで、空になった皿を父に突き出した。
「ごちそうさま!」
猛スピードでバッグを掴んで、追いつかれる前にカフェのドアを開けて飛び出す。
ベルが壊れたかと思うくらい大きな音が出た。