素直にさせないで
練習が終わり、片付けをして体育館中の窓の鍵の確認をしていると、
「好きです!湊君。」
中庭の方から声が聞こえてきて、そっと顔を覗き込むと、練習終わりのバスパン姿の湊が女の子に告白されてるとこで、
(ヤバい…悪いタイミングだ・・。)
そっと窓を閉めて立ち去ろうとするも、湊がなんて答えるか返事が気になり、一歩も動けなかった。
「ごめんね。好きな子がいるんだ。」
好きな子……。
湊に好きな子が…
しゅるしゅる…と全身の力が抜けて、その場に座り込んで呆然としていると
「新川さん、鍵閉め終わった?」
上から優しく覗き込む声が降りてきた。
「えっ…あっ、湊!?えっ!?」
いつの間に?!と思い告白されていたはずの中庭を振り返ると、女の子の姿はもうなかった。
「見てたでしょ?」
「え…あ、ごめ。わざとじゃ…」
「うん。知ってる。」
ふっと優しい目で、分かってるよと微笑んでくれる透き通るような空気感。
私もその空気感に浸りたいのに、簡単には近寄らせてはくれないパーソナルスペースのようなものを彼からは感じる。
またそれが女心を擽らせ、目で追わせるのだろう。
気づくと、鍵をしめてくれている優しさにも私は、また胸をきゅんとさせられていた。