素直にさせないで
「ほっせ。おめぇの手。」
ぎゅっとしっかり握られた鎖のような手が、私の手の感触を確かめながら、ふんっと嘲笑った。
「あんたの手が無駄に太っ…」
と思ったら、意外に細かった。
いつも近くでわめいてるけど、手とか体とかあんまじっくり見たことないかもしれない。
骨格のしっかりした細長い指。
ボールが簡単に吸い付くくらい大きなのバスケット選手の手のひら。
「あんた…手、綺麗なんだね。」
「おう…惚れんなよそれ以上…」
「言わなきゃよかった。」
呆れながらバカを見ると、気持ち良さそうに寝息をたてて寝てる。
「さすがバカ。寝るのも早いんだ。」
普段威張ってる癖して病気になると寂しいなんて、やはりコイツはクソガキなんだ。
「さっ帰って勉強しよ。来週また塾の模試だし。」
熟睡していたのでその手から離れられそうだったのに、今は野獣の憎めないその寝顔が憎らしい…
“いつももっと可愛…”
“ブスなお前は、俺様を見てる時が一番マシな顔なんだよ!!よく見とけよ!!!い・い・な!?”
「またマネージャー失格だとか、文句言われて、内申悪くしたら嫌だから仕方なくだからね!!」
ふと思い出してしまった自分を誤魔化すように鼻をつまんで睨みながら座って、
「ふががっ!!」と苦しそうな顔するバカに
「マネージャーとしてしっかりやらないと湊に嫌われるのが嫌だからだからね…」
文句を言い続けながら、私もその寝顔につられていつの間にか寝てしまっていた。