素直にさせないで
「なぁ、もしお前が勝っていたらどうするつもりだったんだよ。」
アップ中、体育館を並んで走る不破がふと気になり隣の湊に尋ねた。
「え、県ナンバーワンの不破さんが俺に負けるんですか?」
「てめぇえっ!!もしもだっ!もしもっつーてるじゃねぇかよ!!!いちいち確認すんじゃねぇ!!」
首元をおもいっきり掴みながら湊に怒鳴ると、
「こらぁっ!そこの二人何やってんの!!喋らない!!」ピーッ!!
何やら話してる二人に私が袖から笛を吹いて止めると、しらをきった湊はこちらを見てふっと微笑み、
「さぁ。どうするつもりだったですかね。」
そのスマートで緩い笑みの裏側で、相手をはぐらかすような意地悪が見え隠れする湊に、
「しょうまぁぁぁぁぁあああっ!!!!待てぇぇええ」
笑って楽しそうに逃げる湊に、鬼の形相で追いかける不破。
うちの全国きっての二代エースの鬼ごっこを部員達は遠目に見ながら、
「湊って誰よりも不破の扱いうまいよな・・・。」
「うまいというか・・一枚も二枚も湊の方が上というか・・・。」
しみじみと呟くのであった・・・・。