素直にさせないで
「誰が・・・世界一カッコいいって?」
まだ言うか…思わずひきつりながら振り返ると、
「お前はいいのか!?そっちに行ったら…そっちに行ったら…」
「…」
「この俺様に会えなくなるんだぞ!!?」
だから、いいって。
その方が幸せだって。
私は冷たい視線を送ってしまったと思う。
なのに
がばっ!!と勢いよく後ろからタックルされ、
「いったっ!!」
普段から教室で子分達とラグビーしていた成果のお陰か勢いよく地面に二人して雪崩のように倒れこみ、
「よくねぇだろ!!!俺様のいない世界がいいわけねぇだろ!!!」
もう・・・なんなのよコイツは…
「はっ…離してよ不破…」
「いいわけねぇ…だろぉお…」
私のコートをしっかりと掴みながら真っ赤な顔して泣き始めた…。
「よくねぇ…だろぉお…」
その不破力はどんなに揺すっても離して貰えそうにないくらいびくともしない。
「…不破、マジで行かなきゃ。ごめん。」
私が立ち上がると、自動的にその手もぶらんっ…とコートから離れた。
あんなに泣いてるバカを見て心が痛まないわけはないが…
私はバカのいないとこに行くんだ。
もう、アイツに悩まされ狂わされる未来は…
ドサッ…
「?」
後ろから聞こえた不自然な物音に私は振り向くと、不破が、真っ青な顔で冷や汗を流しながら地面に這いつくばるように倒れていた。
「ちょっ…どうしたの!?」
「腹痛てぇ…もうダメだ…」
・・・・
あんたはこんな時まで腹痛なのかよ・・・
呆れて言葉も出ない私は、すぐ近くの家のインターフォンを鳴らした。
「すみません…お手洗いお借りできますか?」