泣きたがりのブルー
泣きたがりのブルー
「モニカちゃん、きみの懐はどこだい」
永い怠惰に乗っかって足をぶら下げていたブランコ、そこでどこにも行けずにキーキーを鳴らす。
蹴って、跳ねて、蹴って、跳ねて。
昨日の雨で湿ったブランコの椅子と足元の水溜りが、折り曲げた足すれすれの風を感じて波紋を作った。
「モニカちゃん、きみの懐はどこだい」
「イッサくん、傷ついたとき痛くなる場所を知ってる?」
「僕は、右側かな」
「そうか、きみは心臓が右側にあるんだね」
人の内臓と真逆ですべてが構成されたイッサは、右胸に心臓を抱えてる。だから苦しいとき右胸をおさえて、私は左胸を抑えた。
もの凄い打撃だった。心に傷を穿てばひとは、穴が空いてしまうんじゃないかと思うほど。ここ最近ずっとそう。ずきずき、そんな程度のものじゃない。
吐き出す言葉のすべて、言葉をもつ生きとし生けるもの、意思疎通が叶うもの、そのすべては四六時中言霊のナイフを振り回す魔術師だ。
うまくうまく伝えなければと思う。
丁寧に丁寧に扱わなければと思う。
間違えちゃうと、傷つけちゃう。こんな口は結んでしまおう、針と糸が必要だ。