泣きたがりのブルー
頭を上げた先にまだ暮れていない空、まんまるお月様がいた。
妄想じゃない白い月、月は追っかけてくるから好きじゃない。お前をどこまでも見張っているぞ、そんな心地になるからね。
どこからともなく公園のはじを、小さな子たちが追いかけっこして駆けて行った。
果てしない怠惰と郷愁にまみれて、今この瞬間に抗っている。私たち、今はそう。
「夕方って、私好きじゃない」
「どうして?」
「さびしくなる、夜が来るでしょ。夜は好き、朝も好き、でもなんだか夕方は切ないよ」
「そう」
痛い、痛いなあ。思いがけず吐き出した言葉を拾って飲み込んで、誰の目にも触れる前に飲み込んでしまえたら。
言葉なんてきっと持たない方が幸せかもしれない、そんな惰性憂鬱に身を焦がしたら、イッサはそれは怠慢だね、と笑うと思う。
そういう男の子だ。
「ぎゅっとする、痛い痛い」
「痛いね」
「痛み止めを飲んでも、この痛みだけは治らない」
人の心を癒すくすりは、誰が作れるのだろう。星? 宇宙? 素敵な言葉を並べたら、それと向き合っている間は少しだけこの傷もマシになる。
でもまた朝目が覚めたら突きつけられるそんな痛みが、ここ最近ずっと続いてる。蹴って、跳ねて、蹴って、跳ねて。
歯を食いしばって思い切り蹴飛ばして、前後ろに躍動する。
ブランコが好きなのは、その場にいてどこにも行かないからだ。どこにもいけない私を思い知りながらどこかに飛び立てる気になれるからだ。