泣きたがりのブルー
 

 どこまで逃げれば本当の自分に追いつける? どこかで逃げ惑っている自分を捕まえて私にして、閉じ込めて受け止められるかな。

 痛い痛い。今もずきずき、ちくちく、穴が開く方がずっとまし。


「ストレスが溜まると、胃に穴が空くでしょう」

「うん」

「心臓はそんな風に、穴が空かないのかな」

「心に穴は空くんじゃない」


 ぽっかりと浮いた虚無。剥がして引きちぎってすてて、ハリボテの木でも埋め込めちゃえば楽だ。苦しいも、すいもあまいも見当たらない。さしあたって人間、その程度。

 言葉なんてまるで呪いだ。

 持たなければ傷つけない、傷つかない。サイレント映画みたいにね、紡げば紡ぐほどその威力を思い知って怯えている。もういいだろう解放しておくれ、もういいだろう他人になろう、もういいだろう、いいでしょう? 世界と剥がれようと今なお躍起になっている。






「全くもって生きづらい世の中だ」

「誰も得しないしね」

「うん」

「出会い間違えたね」

「うん」

「まぁ、長い目で見たらその傷、かすり傷にでもなるさ」


 なるもんか。こんなくるしくてくらいとこ。薄暗くて重いとこ。今は精一杯だというのに、それはそれ本当か?


「イッサにはわからないよ」

「うん、僕にはモニカちゃんがわからない」

「こころがはりぼてのイッサにはわからない」

「うん」


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