砂糖づけのラブレター
ほろあまビスケット
拝啓、未来の私。
今、あなたの隣には私の大切な人が一緒にいますか?
「きゃー!慧太くーん!!」
「やばい!今のシュート超カッコよかった!!」
9月、学校行事である球技大会で一際女子の群がるコートがある。
みんなのお目当ては学年1位、いや学校1位と言っても過言ではない、クールイケメンの進藤 慧太のバスケット姿を一目見ようと集まっているのだ。
「あらあら、相変わらず人気だねー」
私の隣で試合で緩まったポニーテールを結び直す親友の芹那ちゃんは驚くことなくその様子を見ていた。
「ひなは?応援しなくていいの?」
芹那ちゃんの問いかけに私はすくっと立ち上がり、女子が群がる隣のコートまで歩く。
その後ろを楽しそうに着いてくる芹那ちゃん。きっと今から私がしようとしてることが予想できるんだろう。
コートに到着すると私は試合をしている彼の背中を見ながら大きく息を吸った。
「慧太ーーー!!!私の為に絶対勝ってねーーー!!愛してるーーー!!!」
叫び終え、やりきった顔をして一度息を吐くと同時に審判をしている生徒がホイッスルを鳴らす。
「4番!ダブルトラベリング!」
しーん、と静まり返った体育館に審判の声が響く。
4番のゼッケンを着た慧太はゆっくり私の方を睨んだ。
「あ、あはは…っ」
何とかその場を取り繕うと笑ってごまかす。
「ちょっと…慧太君、今の叫びに気を取られて反則になっちゃったよ…」
「ていうか、あの子だれ?」
「慧太君の彼女だよ!2組の佐々木 ひなた!」
「あぁー…、ちょっと変わってるっていう…」
何とでも言いなさい!
私は正真正銘、あの進藤慧太の彼女なんだから!
「ひな、また慧太君に怒られるよ?」
「いいの!怒った顔もカッコいいから!」
少し気怠そうにコートの中を歩く慧太を見ながら私は誇らしげにその姿に熱い視線を送っていた。