砂糖づけのラブレター


「な、なななな、なんて言いました?慧太さん…」


先日のデートから数日経ち、慧太と一緒に登校している道中で私は慧太の口から耳を疑う話しを聞いた。



「だから、バイトするからしばらく一緒に帰れない」


バイト!?
あの省エネ慧太が!?
あの何にもやる気のない慧太が!?
あの働かなくてもいいおぼっちゃまな慧太が!?
まさか、闇バイトでもする気じゃ…っ!?


「おい、全部声に出てるぞ。」

おっと、危ない危ない。
右手で口元を抑える。

「でも何でまたバイトなんて…。そもそも何のバイトするの?」

「…言わない。」

「なんで!?私、彼女!!ハッ!やっぱり闇バイトなのね!?」

「違う。」

「そ、それともまさか…っ女の子がいっぱいいるところではないでしょうね!?」

「………違う。」

「その間はなに!?女の子がいるの!?女の子がいるバイトってなに!?おめぇさん、ホストでもするってぇんじゃねぇだろうねい!?」

「しない。」


スタスタと歩く慧太の袖を前後に揺らしながら、興奮し変な言葉を発している私。
登校している他の生徒の哀れむ目線なんて気にしない!


「今日からバイト入るから、帰り気をつけて帰れよ」

「!嫌だ!慧太と帰れないなんて嫌だ!クラスも違うし、帰りも違うなんて寂しすぎるよ!慧太は可愛い彼女に会えなくて寂しくないの!?」

「……"可愛い"?」

「聞き返すな!惨めになるわ!」


首を傾げ、はて?と考える素振りを見せる慧太の二の腕をバシバシと叩く。


「そういう事だから、よろしく」

慧太はいつの間にか到着した自分の教室へ入っていく。



「なんの"よろしく"!?慧太!待ちなさい!ホストなんてお母さん許しませんよ!!慧太!カムバーーーーーーック!!」

「あんた朝から何騒いでんの」


振り向くとそこには眠そうな顔をした芹那ちゃんがいた。


「芹那ちゃん聞いて!!け、慧太がバイトするって言い出すの!!」

「え、ダメなの?」

「ダメ!!……っじゃないけど、寂しいじゃん!しかもバイト先教えてくれないし!」

「それは怪しいわね」

「でしょ!?」

どうしよう!慧太が大人なお姉様に気に入られて専属ホストとかになっちゃったら!!

私なんていらないって言われちゃう!!


「…芹那ちゃん」

「な、なに?」

「今日の放課後、暇?」

芹那ちゃんは私の言葉に顔を引きつらせた。







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