砂糖づけのラブレター
《ターゲット確認。ただ今交差点を右に曲がりました。どうぞ》
《えー、こちらも確認しました。今コンビニの前を通過しました。どうぞ》
《あれ?今何かを見つめています。こちらからは確認できません。どうぞ》
《あー、なんか野良猫を見つめてますね。どうぞ》
《え!?野良猫!?野良猫見つめて立ち止まってるの!?可愛すぎる!ちょっとそっち行くね!》
「あのさ、普通に慧太君の後尾けていったらいいんじゃない?」
数メール離れた場所にいる芹那ちゃんの元へ走って行く。
私達は学校終わり、バイト先へと向かう慧太の後ろを尾けワイヤレスイヤホンで会話をしながらその動向を追っていた。
途中、慧太が立ち止まって野良猫を見つめている姿に私は当初の目的を忘れ一人悶えていた。
「あ、慧太君歩き出したよ。あれ?あそこって最近出来たショッピングモールだよね?」
慧太が向かったのは先日二人で過ごしたショッピングモールだった。
「もしかして…」
私は一つの可能性を感じ、そのままショッピングモールに入って行く慧太を見送った。
「あれ?こんなとこで何してんの?」
芹那ちゃんと一緒に慧太を見るのに夢中になっていたため、二人とも後ろからするその声に大きく肩を揺らした。
「あ、」
そこには先日会った慧太の友達の晴人君がいた。
「慧太の彼女だよな?俺、天野晴人!こないだはありがとな!」
眩しいくらいの人懐っこい笑顔で私も芹那ちゃんも少し顔を赤くした。
「なに?慧太に会いに来たの?」
「あ、えっと…」
私と芹那ちゃんは気まずそうに目を合わせる。
「?良かったら一杯飲んでけば?俺今ラテアートの修行させられててさー。ちょっと付き合ってよ」
私達は晴人君の屈託のない笑顔に思わず返事を忘れ、彼の勢いに負け誘われるがままカフェへと向かうことになってしまった。