砂糖づけのラブレター
「よし!出来た!!」
「どうぞ」と言われ、渡されたマグカップ2つを笑顔で見つめる。
…が。
「えっと…ハート…?」
「おう!」
「リーフ…って言ってたよね?」
「おう!」
そこには形の無いナニカが注がれており、カップを動かして見ても晴人君の言っていた形には程遠かった。
「これでも結構上達したんだ!」
自信満々に胸を張る晴人君を見て私と芹那ちゃんは目を合わせた後、目尻が弧を描く。
「ふ、ふふっ、晴人君これ全然ダメだよー!」
「あはは!こりゃまだお客さんには出せないね!」
私達はマグカップに浮かぶラテアートを見て笑い、晴人君は「修行が足りないか…」と肩を落としていた。
「ラテアートって慧太もやるの?」
「いんや、アイツはやらないよ。俺もほんとはやらなくていいんだけど、店長がラテアート出来たら時給上げるって言ってたから」
「急に現実的だね」
晴人君は襟足をかきながら照れ臭そうに笑った。
やっぱり慧太の友達だな…。
すごく良い人そう…。
「おい。」
和やかな雰囲気が急に現実に引き戻される。
「遊んでねぇで働け。ひなた、お前は仕事の邪魔だから帰れ。」
"邪魔"。
慧太のその一言に胸がギュッと苦しくなる。
「おいおい、そりゃ言い過ぎだろ。呼んだのは俺だし…」
「コイツが勝手に俺の後尾けて来たんだ。お前は関係ない。それ飲んだらすぐ帰れよ。」
冷たく言い放つ慧太に視界が歪む。
「なによ!彼女なんだから彼氏の事を知りたいって思うのは普通でしょ!?」
「だからって勝手な行動されても迷惑なんだよ」
「迷惑って…。じゃあちょっとくらい教えてくれたっていいじゃん!私彼女なんだよ!?もういいよ!芹那ちゃん、帰ろ!」
「晴人君、ご馳走さまでした!」と二人で頭を下げてお会計を済ませすぐさまカフェを後にした。