砂糖づけのラブレター


それから3日間、私達は朝の登校も下校もしなくなり学校では私達が別れたとまで噂が流れた。


当の私達はというと、あれから慧太から謝りの連絡が来るわけでもなく隣のクラスなのに会いに来るわけでもないその態度に私も意地を張ってだんまりを決め込んでいた。


「あんた達大丈夫なの?慧太君がフリーになったって勝手に思い込んでるファンが慧太君に事あるごとに近づいて来てるらしいけど…」

私だって嫌でも目にする。
私の頭に付いている優秀な慧太レーダーは例え彼が遠くにいたとしてもすぐに反応するのだ。

その度に目に入る慧太はいろんな学年の女の子に囲まれいつもの無表情を通していた。

いつもなら割って入っていくけど、今はしない。
私がいない寂しさを感じればいいんだ!!


「…いや、そもそも慧太は私がいなくて寂しいなんて感じないか…」

自嘲気味に笑いぎゅっと手を握る。
手のひらに自分の爪が食い込んで痛い。

私は窓から入る風を直で感じたくて、教室の窓際に行き外を眺めた。
サラサラとまだ少し生温い風が頬に当たり私は窓の内側にある手すりに両手をかけた。
薄いカーテンが風を受け広がり私を包み込むとそこはまるで一人きりの世界の様に全てが白になった。

後ろからザワザワと声がするがカーテンで包まれた私にはくぐもって聞こえる。


「…慧太、会いたいよ」

意地っ張りでバカな私じゃ慧太の隣にいる資格ないのかな…。






「だったら会いに来いよ。」

聞き慣れた声を間近に感じ、私は勢いよく振り向く。

私と同じように手すりに両手をかけた慧太が無表情でこちらを見つめていた。
ただ、慧太は私の真後ろから手すりに両手をかけているので私は手すりと慧太に挟まれて身動きが取れず、思いの外近い距離に顔を赤くするしかなかった。


カーテンにくるまれた私達は周りの騒がしさが嘘のようで、静かなその空間では気まずさから何も言えなくなってしまった。


「会いたかったんだろ。」

「…別に会いたくないもん。」

「そうかよ。じゃあ俺だけか」

「え?」と顔を上げると慧太は眉を下げ、切なげに笑っていた。

なにそれ、そんな顔するなんてズルいよ。


< 16 / 18 >

この作品をシェア

pagetop