砂糖づけのラブレター


「慧太が私のこと邪魔だって、迷惑だって言ったでしょっ」

ぷいっと慧太に背中を向けて口を尖らせる。


「お前が勝手についてくるのが悪いんだろ。」

「だとしても、そんな言い方しなくてもいいじゃんっ」

「…お前が晴人と一緒にいるからだろ。」

その言葉を聞いて私は思わず振り返る。
私と目があった慧太は数秒目を合わせた後、スッと視線を横にそらす。


「晴人君と一緒にいたからヤキモチ妬いてたの?」

「………。」


何も答えない慧太にだんだんと口元が緩んできてしまう。

「そ、そうなの!?」

「…とりあえず来い。」

私の問いには答えずそのまま私の腕を引いてカーテンから飛び出す。
二人きりだった空間から出ると知らぬ間にたくさんの人だかりが出来ていた。
みんな私達の動向が気になったのだろう。
ヒソヒソと耳打ちをしている人がたくさんいる。


「慧太!どこ行くの!?」

無言のまま私の手を引く慧太の後ろ姿に問いかけても何も答えてくれず、階段を駆け上がっていく。


着いたのは屋上だった。


「ど、どうしたのっ、慧太っ…はぁはぁっ」

慧太の長い足と脚力について行くに必死で私はかなりの息切れをしていた。
連れて来た本人は何食わぬ顔でそんな私を見下ろしている。


「なんなのっ一体…」

「お前は普段俺につきまとってくるくせに、すぐフラフラどこかに行く。」

「え?なに?急にお説教ですか?」

何を言い出すかと思えば、ポケットに両手を突っ込みながら少し苛立ち唐突に話し出した。


「晴人のこと羨ましいとか、勝手に懐いたりとか。」

「あ、あれは晴人君と一緒だったのが羨ましいって意味じゃなくて、昔の慧太を知ってる晴人君が羨ましいって意味で…っ」

「とにかく、うちの小動物は首輪でも付けとかねぇとどっか行くってのがわかった。」

「?何の話しですか??」

話の意図が分からず眉間に皺が寄る。
慧太はポケットから手を出すと私の右手を取り、腕を掴んだ。


「!」


薬指に当たる感覚。
キラキラと光るシルバー。

これは…、うそ…っ!


「ゆびわ…?」

右手の薬指にあの日、あのジュエリーショップで付けた指輪が光っていた。






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