砂糖づけのラブレター
「な、ななななな、なにゆえっ、このような物をををををっ…!」
「落ち着け。」
これが落ち着いていられますか!!
だってあの慧太が!
いつも無表情で何考えてるかわからない慧太が!
私に贈り物なんてっ!!
「だから聞こえてるっつーの。」
私は慌てて両手で口を塞ぐ。
口元に手を当てた時、カツンと重ねた指に指輪が当たる。
やっぱり夢じゃないんだ…!
「な、なんで指輪??」
「指輪じゃない。首輪。」
「指にはめるのは指輪って言うんだよ?」
「うるせーな。わかってるよ。」
照れ隠しで言ったのか、慧太は私から目線をずらせて襟足あたりに手を置いた。
「…もしかして、小動物って私のこと…?」
「他に何があんだよ。うちに動物はいない。」
「慧太…、この為にバイトしてた…の?」
「………。」
無言の慧太を見て私の問いは正解だったと思い知らされる。
「う、うっ嬉しい〜〜〜っ!!」
涙で慧太が歪み、私は誰もいない屋上でわんわん泣き喚いた。
「うるせぇな。」
ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に慧太は右手を私の後頭部に添え、自分の胸に押し付けた。
おでこが慧太の胸にあたり、そこからじんわりと熱が伝わる。
「お前は誰の彼女だよ。」
「慧太様です…」
「だったらフラフラ他の奴に懐いてんじゃねーよ。」
「愛してます。」
「知ってる。」
「ふふふ」と私の笑い声がくぐもって聞こえる。
慧太の胸の中にいるから慧太がどんな表情をしてるか見られないのが残念だけど、私の頭をポンポンとリズム良く優しく叩いてくれてるからきっと穏やかな表情なのかな…、と勝手に想像する。
慧太、私を彼女にしてくれてありがとう。
「芹那ちゃん見て見てー!!!慧太が指ばばばばぶっ…!」
「大声出すんじゃねぇよっ」
屋上を出て教室に戻ろう廊下を歩いてると芹那ちゃんを見つけた。
私は指輪をもらったのが嬉しくて大声を出して報告しようとすると慧太が後ろから私の口元を塞いだ。
「なんで!!いいでしょ!」
「あのなーっ…!」
珍しく慧太の耳が少し赤い気がする。
その時、何か思いついたように一度静止すると慧太の唇が私の耳元に近付いた。
「……二人だけの秘密。出来るよな?」
「は、はひ…っ!」
次に私が首から顔まで真っ赤にさせた。
近くに来た芹那ちゃんは不思議そうな顔で私を見ている。
慧太はそのまま「じゃ。」と言って教室に入って行った。
きっとこれからも慧太には敵わないんだろうな。