砂糖づけのラブレター
「見て見て芹那ちゃん!慧太のスリーポイントシュートの決定的瞬間!超カッコよくない!?」
「はいはい、さっき一緒に見てましたよ」
スマホ画面いっぱいの愛する彼の勇姿を見せると芹那ちゃんは手ヒラヒラさせてそっぽを向いてそう言った。
私はその行動に大きく頬を膨らます。
「いいもーん。どうせ私は慧太バカですよー。そうだ!この写真ホーム画面にしよっと!」
鼻歌を歌いながらスマホを操作する私の横で芹那ちゃんが溜息を吐く。
「付き合ってどれくらい経つっけ?」
「えっとねー、もうすぐ10ヶ月!」
「約一年も一緒にいるのによく飽きずにそんなテンションでいられるね」
私は人差し指を左右に振る。
芹那ちゃんが少し鬱陶しそうな表情をしたのは見て見ぬ振り。
「芹那ちゃん?君は白ご飯は好きかい?」
「白ご飯??好きか嫌いかって言われれば好きだけど…」
「白ご飯ってさ、小さい頃から食べてるよね?給食やお弁当にも入ってて、ほぼ毎日食べてるでしょ?」
「まぁ、そうだね…」
「でも飽きないよね?」
「まぁ…」
「そういうことだよ!」
「え?ごめん、どういうこと?」
心底不思議そうにする芹那ちゃんにニヤリと口角を上げた。
「飽きのこない美味しさ!くど過ぎない味!日常にそっと寄り添う、当たり前の存在!!慧太もそれを全て兼ね備えているのだよ!」
「はぁ…」
「だから白ご飯って飽きないよね!」
「あれ?白ご飯の話しになってない?」
あれ?何の話しだっけ?
自分の発言に途中から頭がこんがらがってしまった。
「誰が白ご飯だって?」
聞き慣れた声に振り向くと不機嫌そうな慧太が私を見下ろしている。
「慧太!!試合お疲れ様!」
会えて嬉しくて慧太の腕に巻き付くと「やめろ」と頭を鷲掴みにされた。
「お前、ちょっとは静かにできねぇのか。試合の時も叫ぶんじゃねぇよ」
「あ、あれは、彼女として精一杯応援したくてですね…」
ごにょごにょと話してる私を見て慧太は溜息をつき、持っていたタオルを私に被せた。
「ほら、それで汗拭け。さっさと制服に着替えねぇと風邪ひくぞ」
慧太はタオルを被ったままの私の頭をポンっと叩くとそのまま男子更衣室へ向かってしまった。
顔を赤くしたままそんな彼の後ろ姿を見ていると「あ、」と何かを思い出したように慧太は振り返る。
「そのタオル、綺麗に洗って返せよ」
ずきゅーんとピストルで胸を撃ち抜かれた音がした。
「芹那ちゃん見た!?慧太がデレた!!いつもツンツンの慧太がデレたよ!」
「あれをデレたっていうの?洗濯物押し付けられただけに見えるけど」
芹那ちゃんの困惑した表情を尻目に私は慧太から渡されたタオルを被りながらギュッと抱きしめた。