砂糖づけのラブレター

授業が終わり、芹那ちゃんに別れを告げると私は隣のクラスに向かった。

少し開いていたドアから教室の中を見るとホームルームが終わって帰る用意をする人や、友達同士で話している人もいる。

その中で私にとって一際キラキラしている人物が目に入る。

男の子数人と話しをしている慧太だった。


「カッコいいな…。あ、」

いつものように声をかけるまで自分のいない時の慧太の行動を盗み見ていると、慧太のクラスの女の子が話しかけていた。

慧太は相変わらず仏頂面で淡々と彼女に答えており、一つもニコリとはしないけれど女の子は嬉しそうに話しかけている。


当たり前の、いつも通りの日常。


少しモヤモヤする自分の心が狭すぎて嫌になる。


「ふぅ…」と息をつき、目線を下げていると、教室を出ようとした男子生徒とぶつかってしまい男子生徒は私だと気がつくと慧太の名前を呼んだ。


「あ…、えっと、慧太!帰ろ〜!」

元気よく手を振ると慧太は話していたクラスメイトに挨拶をし、私の元へ歩いて来る。


「遅かったな」

「HRで先生の話しが長引いちゃって…」

「ふーん」


それ以上何も言わず下駄箱へと歩き出す慧太の後ろをついて行った。


慧太は感情を言葉にする事も少ないし、顔に出す事も少ない。


いつも表情筋が固まってるんじゃないかと思うくらい仏頂面で能面。


私の元気の半分くらい分けてあげたい。
そしたら、少しでも慧太の考えてることがわかるのにな…。


「なに?」

「へ!?」

「人の顔ジロジロ見てるから」


危ない危ない。
私、考え事しながらずっと慧太の顔見てたんだ…。


「えっと…、慧太がカッコよくて…つい…」

「はぁ?」

「いつも見てんだろ」と呆れながら前を歩いていく。

その背中がいつもより遠く感じる。


「それでも、いつも思ってるよ」

足を止めた私に慧太は振り向いた。


「毎日毎日、365日24時間!慧太のこと好きだな、カッコいいなっていつも思ってるよ!!」

「…なに泣いてんの?」


慧太の言葉に右手で下瞼に触れると指先が濡れた感覚がした。

無意識に涙が溢れてたみたい。



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