自分の恋より、他人の恋
「なんで?」
それでもこの色男は私に一番の理由を話せと言う。
これは話さないと帰してくれなさそう。
なんてことだ、これ家族の誰にも…お姉ちゃんにさえ言ったことのない、一応墓場まで持っていく予定だったのに、話す日が来るなんて。
「笑わないでくださいよ?」
「笑わない」
本当かなってちょっとばかし疑いの目をかけてみたけど、笑わないだろうなと判断して話すことを決めた。
「小学4年生の頃なんですけど、私気になってた男の子がいたんです。ある日いつものようにその子に挨拶したり話しかけたりしたら『黙れブス』とか『ブスなのに可愛く見せようとすんな』なんて言われちゃって、それがショックで極力顔を隠そうと、あまり相手を見ないで済むようにと前髪を伸ばし始めたんです」