自分の恋より、他人の恋
あの時の私はショックが大きくて、ガラスのハートだった純粋な心はバラバラに砕け散った。
家に帰っては枕をこれでもかって程濡らしたのを覚えてる。
今思い出しただけでも本当嫌な思い出でしかない。
「ブスならブスらしく生きようと思って」
___それに、その時かな…自分の恋を諦めたきっかけは。
「バカだな、そいつ」
私の話を聞き終えた時雨さんはそう言って口角を上げると___…
「え?___エッ」
リップ音をたてて口付けた。
額に感じるのは柔らかく温かい感触。
視界には見てはいけないような、禁断のシャツの向こう側にある逞しい胸板が丸見えで、只今脳が沸騰中。
ダブルパンチを食らってしまい、私の腰が砕けかけた。
グッと踏ん張って耐えたけど、ゆっくり離れていく唇の視線を追って時雨さんと目が合ってしまった私はもうダメダメだった。
心臓は五月蝿いわ、足も腰も震え、顔は熱くて赤くてどうしようもない。
そんなダメダメの私に、時雨さんはトドメを刺すかのように耳元に口を寄せると甘い声で囁いた。
「こうやって触れたかったのに、可愛いって本当は言いたかったのに言えなかったんだよ」
イケメンボイスだけで危うく妊娠しかけたのに、また目を合わせると。