自分の恋より、他人の恋
だから私は苗字にさん付けで呼んでいるっていうのに、一体何が不満なんだろう。
「気が変わったんだ」
「なんと勝手な」
「勝ってでもいい、名前で呼べよ」
「なんか、嫌です」
「は___っ」
時雨さんがはぁぁ?と大きな声を出しそうだったから俊敏に彼の口を私の手で塞いだ。
何とかセーフだけど危なかった。
「しーっ。隣の2人に気づかれたらどうするんですか」
気づかれたらおしまいだ。もうあの2人を観察できなくなってしまう。