自分の恋より、他人の恋
そう“今”はね。
中庭を通り抜けて隣の校舎に入っていくと、いつもお昼に使っている書道部の部室に入っていった2人。
皆の前であんなに言い合いをしていて、トシヤさんに対しては「お前彼女より弱すぎ」などと同級生から言われているのに彼らは一度も別れようとしたことがない。
それはずっと観察してきた私だから分かることで、あの2人はむしろ仲がいいというかあの2人だからこそバランスを保てるんだとつくづく思う。
カップルが部室に入るのを見計らって私は残りのおかずを口の中に詰め込むと、急いで片づけて足音を立てないように部室に近づいた。
これはいつもの事で、もう慣れてる。
そしてこの学校では私しか知らない2人のもう1つの顔がこの場所で拝めるのだ。
だから私は【逆転カップル】と呼んでいる。