金曜日の恋人〜花屋の彼と薔薇になれない私〜
エピローグ
三年後。
「森川さん。次はこの資料作成頼める?」
「はい。今日中で大丈夫ですか」
「うん。森川さん、仕事が丁寧だから助かるよ。正社員の話、真面目に考えてみてね」
「はい、ありがとうございます」
結局、あの後すぐに芳乃と匠は離婚した。匠は父の病院にもあの街にもいられなくなり、地方の病院へ転職していった。
里帆子夫妻は親権問題が解決せず、いまだ離婚調停を続けているそうだ。
芳乃は一時は実家に身を寄せていたが、いまはひとりでアパートを借りて暮らしている。ひとり暮らしも派遣社員も、この歳にして初めての経験だ。最初は不安しかなかったが、始めてみれば意外と悪くない。
安アパートで暮らす40代派遣社員という身分は芳乃の身の丈に合っていて、気が楽だった。セレブ妻という役どころは、やはり芳乃には荷が重かったのだろう。
「森川さん。次はこの資料作成頼める?」
「はい。今日中で大丈夫ですか」
「うん。森川さん、仕事が丁寧だから助かるよ。正社員の話、真面目に考えてみてね」
「はい、ありがとうございます」
結局、あの後すぐに芳乃と匠は離婚した。匠は父の病院にもあの街にもいられなくなり、地方の病院へ転職していった。
里帆子夫妻は親権問題が解決せず、いまだ離婚調停を続けているそうだ。
芳乃は一時は実家に身を寄せていたが、いまはひとりでアパートを借りて暮らしている。ひとり暮らしも派遣社員も、この歳にして初めての経験だ。最初は不安しかなかったが、始めてみれば意外と悪くない。
安アパートで暮らす40代派遣社員という身分は芳乃の身の丈に合っていて、気が楽だった。セレブ妻という役どころは、やはり芳乃には荷が重かったのだろう。