契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「あ、あの……」
 
 大吾さんが声を出して笑うのは珍しいことで、やっぱり何かあったのかと心配になってしまう。

「いや、笑ったことを気にしているのなら悪い。今日の八重は表情がくるくる変わるから面白くて、笑うのを抑えられなくなった」
「そう、ですか。恥ずかしい……」
 
 そんな百面相みたいなことをしていたなんて。今更だとわかっていて、両手で顔を隠す。

「いちいち隠すな。何か勘違いをしているようだが、八重が俺の前でいろんな顔を見せてくれるのが嬉しかったんだ。だから恥ずかしがる必要はない、もっとたくさんかわいい顔を見せてほしい」
「かわいい顔とか、言わないでください……」
 
 恥ずかしさに照れくささが加わり、余計に顔から手が離しにくくなってしまう。

「まあいい、そのまま聞いてくれ。このあと、今週末に出演するテレビ番組の打ち合わせがあって出かける。会社に着いたら斎藤がマンションまで送る手はずになっているから、そのように。夕飯はいらない。帰りはさほど遅くならないと思うが、打ち合わせが終わったら連絡するが、眠くなったら先に寝て構わない。無理はするな」
「はい、わかりました」



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