契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
恋に落ちて
「八重、おはよう」
けたたましい音を立てる目覚ましとは正反対の、柔らかい声で目が覚める。
「んん……おはよう……」
布団から腕を出し伸びをして、ゆっくりと目を開けた。
「わあ!? えぇ、大吾さん!? お、おはようございます」
私の横でくっつくように寝ころんだ大吾さんが、片肘ついて私を見下ろしている。見目麗しい顔が間近にあって、それ以上何も言えなくなってしまう。
でも、ちょっと待って。昨晩は大吾さんの帰りを、リビングで待っていたはず。なのにどうして、私はベッドにいるのだろう。
昨日の田町さんの言葉が否が応でも頭から離れず、大吾さんが帰ってくるまで待つと決意。エスプレッソマシンで大吾さんに教えてもらった通りに淹れたコーヒーを眠気覚ましに飲み、二十四時近くまで起きていたのは記憶にあるけれど、それ以降は……。
「もしかして、大吾さんがベッドまで運んでくれたんですか?」
ベッドにいるということはそういうことで、でも一応聞くまでもないことを聞いてみる。
「かわいい顔をして、ぐっすりと眠っていたからな。あんなところで寝ていると風邪をひく。これからは先に休んでいて構わない」
「はい。でも……」
昨日だけは、どうしても待っていたかった。結局は寝てしまったけれど、その気持ちだけはわかってほしかった。