契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
抱きしめる腕
「八重。本当に、後輩の結婚式に出席するつもり?」
幼稚園の年少のときに出会い付き合いも二十年を超えた幼馴染、橘小梅が怪訝な顔をする。
「仕方ないよ。同僚も行くし出席しないと」
そう言ってパンケーキを頬張った私──天海八重はあてもなく視線を動かし、その先にあったウェディングドレスを着たクマのぬいぐるみを見てため息をつく。
同じ会社に勤めていた彼から、『ほかに好きな人ができた。別れてほしい』と言われたのはちょうど半年前。
二十七歳にもなって縋るのもみっともない、好きな人ができたなら仕方がないと別れたものの、その相手が仕事を教えている四つも年下の後輩、相原加奈だと知って愕然。身近にいたのになんで気づけなかったのかと、自分を何度責めたことか。
職場が同じで仕事がしずらくなるのもどうかと公にはしていなかったから、私と彼が付き合っていたことを彼女が知らなかったことは仕方ない。けれど彼は私の後輩だと知っていて、相原さんに手を出したのだ。