契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
「じょ、冗談ですよね? もう大吾さん、人が悪いです」
 
 あははと面白くもないのに笑うと、大吾さんは呆れたようにくしゃくしゃと私の髪を撫でた。

「冗談じゃない。責任、取ってくれるんだろ?」
 
 そう言って私の顔を覗き込む大吾さんの顔は、本当に冗談じゃなく本気のようだ。
 
 でも結婚は、責任でするものじゃないでしょ。お互い想いあって愛し合わなければ、そんなのうまくいくはずがない。
 
 それに大吾さんは、私なんかでいいの? 好きでもない相手と結婚なんて私は無理、一生に一度の結婚は大恋愛の末に愛する人としたい。それが普通じゃない?
 
 言いたいことは山ほどあるというのに、大吾さんの顔を見ていると何ひとつ言うことができない。当たり前だけれど、こんなこと初めての経験で何が正解なのかわからない。
 
 やっぱり責任は取るべき……なんだろうか。
 
 なんとかそこにたどり着き、わかりましたと言おうとしたそのとき。大吾さんはいきなり首の後ろを掻きむしり、バツが悪そうな表情を浮かべた。



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