契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました

 何が悲しくて、元カレの結婚式に出席しなければいけないのか……。
 
 そんな憂鬱で複雑な気持ちのまま、とうとう結婚式当日を迎えてしまった。
 
 天気は快晴。三月の後半といえばまだ肌寒い日もあるというのに、今日は朝からぽかぽか陽気。春の花が咲き乱れるテラスに出ても、さほど寒さを感じない。

「八重先輩。今日はいつにも増して可愛いですね」
 
 ひとりで時間を潰していると、トントンと肩を叩かれ振り返る。そこには私なんかより数倍可愛いいひとつ後輩の美加ちゃんがいて、優雅な笑顔を湛えている。

「美加ちゃん、お世辞でも嬉しいわ。もうそろそろ始まる?」
「はい。先輩いつもボーッとしてるから、忘れてるんじゃないかなぁと思って呼びに来たんです」
 
 美加ちゃんは甘ったるい声でそう言うと私の腕に自分の腕を絡ませ、引っ張るように歩き出す。

 自分のことには無頓着な私の面倒をよく見てくれる可愛い後輩だが、何かにつけてひとこと多いのが玉に瑕。

 それでも今日は一緒にいると余計なことが気にならないというか、底抜けに明るい彼女の存在がありがたい。


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