契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました

 住人専用の車寄せに車を停めた大吾さんが、運転席を降りボンネットのほうを回って助手席のドアを開けた。

「ほら、行くぞ」
 
 言葉と共に差し出された手に緊張しながらおずおずと手を重ねると、軽く手を引かれふわりと車から降りた。

「ありがとうございます」
 
 私の指を優しく握る手は離されることがなく、少し弾む足取りで大吾さんの後ろをついていく。
 
 グランドエントランスホールに足を踏み入れると、外観とは正反対の白を基調にした迎賓空間が広がっていた。その広い空間は大きな窓ガラスを透過して、四季折々の草花が楽しめる庭園から溢れ出す光が豊かな温かみを演出している。

「菱川様、お帰りなさいませ」
 
 フロントに到着すると、制服を着た女性が素敵な笑顔で出迎えてくれる。まるで高級ホテルのような対応に感心していると、大吾さんが車のキーを手渡した。

「お願いします」
「かしこまりました。お預かりいたします」

 フロントには二十四時間コンシェルジュがいて、きめ細かなサービスで生活をサポートしてくれるらしい。



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