契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 披露宴会場に入ると、少し前までちらほらとしかいなかった出席者たちがほぼ全員席についていた。慌てて美加ちゃんと同じテーブルに隣同士で座り、一息つくと何気なく辺りを見回す。
 
 同じテーブルには美加ちゃんをはじめ同僚の女性が三人と、元カレの友人だろうと思われる男性が三人座っている。

 私以外の三人は男性たちと楽しそうに談笑を始めるが、私はそんな気分になれない。はあと重苦しい息を吐き、披露宴が始まるのを待った。

 すると、まだ新郎新婦が入場してきていないというのに、チクチクと胃が痛みだす。披露宴が始まる前からこんな調子じゃ、先が思いやられる。

 やっぱり来るんじゃなかったかな。

 それでも帰るわけにもいかず、肩を落とし不安げに視線を彷徨わせる。するとクロスや綺麗な花、お皿などで華やかに彩られたテーブルをはさんで真正面に座る男性と目が合った。というより、私のことを見ていた? まさかね。

 無視するのも失礼かと愛想笑いをして会釈すると、彼もまた同じように頭を下げる。笑顔が素敵で感じのいい人だなと思いながらも、すぐに目線を逸らした。


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