契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 そうは言っても、入社したばかりの人間がいきなり知らない新ブランドのチームに入るなんて許されるのだろうか。

 チームの人たちに私をどう紹介するのかわからないけれど、大吾さんと一緒に参加したらかえって気を使わせるだけ。それこそ仕事がしにくくなるような気がする。

「どうしても参加しないといけませんか? 一緒に働く方々がどう思うか」
「それは心配いらない。俺の腹心の部下ばかりだから面倒なことにはならないし、選ばれし逸材ばかりだからいい勉強にもなると思う。なにより、俺が文句を言わせない」
 
 なんて大吾さんは真剣な顔をして言っているけれど、実はそれが一番心配だったりする。『この人は俺の妻だ』とか言うつもりなのだろうか。
 
 憂鬱だ……。

 でもその一方で、胸弾ませる自分がいる。日本酒が好きでこの会社を選んだと言っても過言じゃないだけに、日本酒造りに一から参加させてもらえることは至福でしかない。



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