【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約
「そして、以上の契約を順守した場合であっても、侍女として不適格だと判断した場合は、即時解雇と処す……以上。……ルネリア、どうするんだい。これ、行ってもあんた下手したら酷い目に……」
「行きます、行かせてください」
紹介所の主の言葉に、ルネリアは素早く返事をする。彼女は今まで、人に親切に接してもらった記憶が殆どない。幼き頃自分に優しくしてくれた母は死に、それまで帰ってこなかった父は、母が死ぬと妾とその子供を連れ、彼女に冷たく当たり、継母と異母姉となった二人はルネリアを虐げた。
しかし、紹介所の面々は、はじめこそルネリアに対し避けるような振る舞いをしていたが、彼女を虐げることはなく、徐々に自らの技術を与えるなど温かく接するようになった。
ルネリアは、やっと周囲に恩返しができ、そして自立できるのだと、目の前に提示された条件を晴天の霹靂のように捉えていた。
「私、メアロード家の侍女として、しっかりと勤めてまいります」
ルネリアの宣言に、周囲は穏やかに微笑む。しかし全員、彼女を祝福しているわけではなかった。