【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約

 よってルネリアは屋敷を出るまで、実の父である男爵、継母である夫人、そして屋敷を出入りし、家財道具すべてを引き取っていく王家の兵士たちに蔑まれ続けた。両親からは、八つ当たりを受けるように暴力を受け、兵士からはどうして姉を止めなかったのか、お前もおこぼれを貰う気だったんじゃないかと遠目からは睨まれ、顔を合わせれば詰られた。

 ルネリアは、姉に対してずっとお願いをしてきた。王太子には婚約者がいる、これ以上の行動は家が傾いてしまう。公爵令嬢にも不敬であると。しかし姉のマリアはそれを僻みと受け取り、父や母にやめさせるよう進言した。二人はルネリアに「姉の恋路を邪魔したいのか」と叱咤した。「未来の王妃の妹として、恥ずかしくないのか」そう、まるで未来が約束されているかのように、ルネリアに言い含めた。

 だが、兵士はそんなこと知らない。知るはずがない。兵士たちの目には、ルネリアがただ王家に背いた敵にしか見えない。

 ――若い娘なんて、どうせ身体を売らなければ生きていけない。人の男を寝取る女の妹には、当然の末路だ。ざまあみろ――

 そう、ルネリアを突き飛ばした兵士は言った。
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