【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約

 平民の暮らしなんて令嬢が出来るものか。まして職に就くなんて不可能だ。ダンスと社交しかできない娘がすぐに出来る仕事なんて、たかが知れている。兵士は彼女の未来をせせら笑っていた。

 しかし、ルネリアは、いつか家を追い出されるのではと考え、ずっと侍女の働きについて勉強をしていたのである。

 それは、適齢期であろう年齢を過ぎ、周りの令嬢が次々に令息と婚約を結び始めてもなお一向にルネリアに関心を持たない両親を見て、自分はいつか追い出されると危機感を持っていたからだ。

 決して家が没落すると考えていたからではなかったが、ルネリアは我が家で働く侍女を観察することはもちろんのこと、どんな働きをするのか学び、この家を追い出されたときに生きていけるよう、毎日訓練を重ねていた。

 自分の侍女に頼み、内密に侍女や執事の仕事を斡旋する町の紹介所へと連れて行って貰ったこともあった。侍女はルネリアにまともな扱いををすれば夫人に叱咤されるため、表向きに彼女を慮ることはなかったが、人の心はあった為に罪悪感は人並みに抱いていた。
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