【完結】吸血侯爵と没落メイドの囚われ初恋契約
稀に王家や公爵家から離れた家々もあるものの、そういった家はルネリアが訓練を受けた侍女ではなく、ただの貴族として温室暮らしをしていた使えない娘であると突っぱねた。
このままこの国にいても、果たして自分のような人間を採用するような職場は見つかるのだろうか。ルネリアは不採用の通知の文字をじっと見つめる。その様子を周囲も心配そうに見つめていた。人々が心の中で祈った瞬間、紹介所の女主人が黒い封筒を片手に「ルネリア、ルネリアはいるかい!」と大きな足音を立て、焦った様子で声を張り上げた。
「はい、ここにいます」
ルネリアが手を挙げる。紹介所の主は彼女の前にある机に大きく手をつくと、封筒を広げた。
「あんたに、あんたにっ条件の合う職場が見つかりそうなんだよ!」
「え……」
紹介所の主の言葉に、ルネリアだけじゃなく周囲にいた職を探す人々もどよめいた。今まで連戦連敗、誰よりも職を探し、誰よりも不採用を受けていたあのルネリアにとうとう職が見つかるかもしれない。人々は顔を見合わせながらも、彼女と紹介所の主が並び立つテーブルを囲っていく。