自由になりたい①
「そんなに走ってどこ行こうってんだ...?...まさか、家事をサボったってんじゃねぇだろうなぁ...??」
走って上がった息も、温かくなった体温も、血の気とともに一瞬で引く。
今一番会いたくない、会ってはならない奴と会ってしまった。
どうしよう。死にたくない。逃げなきゃ。
そんな言葉しか頭に浮かばない。
無理やり手を振りほどいて逃げることもできるかもしれないが、逃げれたところで追いつかれて何故逃げたかを問われるだろう。
そこで正直に「食器棚倒しました」などと言えるわけがない。正直になったとしても、逃げようとしたことは変わらない。
私は改めて絶望した。逃げるための道をちゃんと選べばよかった。後悔した。
...いや、この男についていった時から、もう後悔をするべきだったのではないか。何を今更。
何も考えることができない。この状況を打開する方法を考えなくてはならないのに、頭が働かない。
「何か言え!!!」
頬をぶたれる。しかし、私の頭の中は白いままだ。
「チッ...!来い!!」
腕を強引に引っ張られる。恐らく、家に戻るのだろう。
待ってくれ、家に戻ったら駄目だ。バレてしまう。