自由になりたい①
「...いやだ...!!」
無駄だとわかっていても、抵抗してしまうのはなぜだろうか。
引っ張られる方向とは逆の方向に自分が引っ張る。しかし、男はまた強引に、さっきよりも強く私の腕を引っ張る。
それを繰り返しているうちに、気付けばもう家についてしまっていた。
なんて馬鹿なんだ自分は。抵抗なんてしても何にもならないのに。もっと他に良い方法があったかもしれないのに。
そのくらい、頭が働いていなかった。いや、もう考えるのが面倒になっただけかもしれないが。
...そうか。面倒だ。もう何もかも面倒だ。そして無駄だ。頭のどこかでは、それがわかっていたんじゃないのか。
考えても答えは出ない。
抵抗しても何も変わらない。
無駄なだけだったんだ。
そんなことを考えているうちに、男と私は家の中に入る。
もう抵抗などしなくなった私に目もくれず、男はリビングに向かっていく。
そして、倒れた食器棚を見つける。
「なんだこれは!?」
やっぱそうなるよね、などと呑気なことを思っている私は、少しおかしくなってしまったのかもしれない。
「お前がやったのか?!」
胸倉をつかまれる。
いつもならここで恐怖を感じ、絶望してしているところだが、なぜか何も思わなかった。
「......」
「この...!!くそ野郎が!!!」